Good night, boys「ここでお会いするのは珍しいですね」
「ん? ああ、風見か」
自動販売機の前にあるベンチに腰掛けていた。庁舎内で降谷を見かけたのは久しぶりだ。彼が手にした缶はまだ封が開いていない。
風見がゼロの下について、十月ほどになる。彼との初対面は決して良いものではなかったが、業務上で接触や衝突を繰り返しながらも、時折雑談を交わす程度の仲にはなった。
「コーヒーですか。自分も飲もう」
「じゃあ、これをやるよ。買ったばかりだ」
そう言って降谷は、黒に金で縁取られた小さな缶を風見に手渡した。
「これ、ご自分で飲むつもりで買われたのでは」
「眠気覚ましにな。でも、調子が優れない気がして、飲むのを躊躇っていたところだ。よかったら飲んでくれ」
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