kiss,kiss,kiss,「おはようございます」
テレビ局は年中無休で眠らない。いつも誰とでも朝出会ったかのように挨拶をしながら、廊下を通り抜けて楽屋へと向かう。
何度目かの挨拶の後、「Eden 七種茨様 漣ジュン様」と記された扉の前に到着する。
ノックをして扉を開くと、茨はコーヒーを片手に鏡の前で座っていた。
「おはよーっす」
まっすぐに伸びた背中に声を掛けると、茨は鏡越しに「おはようございます」と応えたが、その顔はあまりにも生気がない。
「ちゃんと寝たんですか? 俺らには煩く言うくせに、またあんたは」
言いながら、茨の隣の椅子に腰掛ける。
「ご心配には及びませんよ、小刻みに寝ております。ジュンはよく眠れました?」
「おかげさまで」
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