蜂と猫と月時雨雨が降っていた。
傘を差し、裏路地を通ると猫が雨に打たれながら縮こまっていた。それを見て何となく雨に当たらないように傘を置いた。ただの気まぐれってやつだ。
俺は雨に打たれながらまた歩き出す。
一瞬背後から衝撃と冷たさを感じた。
そしてズルリと己から引き抜かれる。
『ああ、これは刺されたんだ』
そう考えられるくらいには俺は冷静だったと思う。
「お前のせいで俺の大事な妹は死んだんだ!これは仇だ!」
俺を刺した男がいう言葉も熱と痛みでどうでもよくなってくる。俺はどんな顔をしていたんだろう?男は俺を見て走って逃げてしまった。
ああ、痛いな
今まで人に誇れる生き方はしてこなかったと自分でも思っているし、いつ死んでもおかしくないとも思っていた。
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