⚠️自殺とか子供がひどい目に遭う描写があります 夏の、空気が肌に張りつくような雨の日だった。
休み前の最後の登校を終えて、みんなが昇降口に向かっていく。朝は薄く雲が出ていたくらいだったのに、時間が経つにつれて黒々とした雨雲が空一面に広がっていた。終業式が終わる頃には、そこからひとつ、ふたつと雨粒が落ちてきて、すぐに校庭に池を作った。
ざあざあと。
地面に、屋根に、誰かの傘に落ちてきたその、大きな雨粒の音が心地よかった。みんなは駆け足で水溜まりを派手に踏みつけながら帰っていく。傘を片手に。
僕にはなにもなかった。僕の手には、なにも。
明日から夏休みで、いつもならロッカーに入れっぱなしの折りたたみ傘も、つい昨日持って帰った。空っぽのロッカーには、今日の大掃除のお陰で埃ひとつ落ちていなかった。
3273