祈り祈り
旅人の言葉に手にした茶碗が割れるまでなくともみしりと小さな音を立てた気がした。
俺のかすかな動揺など友は悟ることもなく、また俺も悟られまいと…いや、自覚していなかったのだから無意識に平然と話の続きを促すような姿勢を取った。
何気ない平凡な璃月の昼下がり。往生堂の午前中の仕事が少し立て込んだこともありやや遅れ気味となった昼食を万民堂で取ろうとしていた矢先、目ざとく俺を見つけた白いふわふわが落ち葉を切り裂く勢いで飛び込んできた。
「奢ってもらおうなんて微塵も思ってないけど、今日のおすすめに関しては絶対外さないだろ」
ふんっと胸を張る友の相棒の信頼に応えるべく、俺は今朝の散歩で得た市場の仕入の様子、気温、旅人の疲労度などを考慮して一通りの昼食メニューを提案した。
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