迷子 遠くから幼子が泣く声がした。
正確には鳴き声というべきかもしれない。ヒトのそれと雛鳥のそれが絶妙に混ざり合った音だ。
本来このような街中ではまず聞こえることのない、鍾離自身数百年と立ち会っていない…仙鳥の雛鳥独特の鳴き声にまさかと背筋が泡立つ心地がした。
「あ、しょぉぉぉぉりぃぃぃぃぃーーーー」
鳴き声を上回る友人の相棒…パイモンの絶叫に通りすがりの人々さえも振り返る。その後ろをぱたぱたと…予測に違わず子どもを抱えた旅人が姿を見せた。
「パイモン、それに旅人…それから……」
自然と鍾離の視線が旅人の腕の中へと移る。
いまだ鳴き止まぬ稚児は手足と、そして羽をばたつかせて旅人の腕の中から抜け出す勢いだ。
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