意匠を変えたこの夜に 間取りだけは知っている古びた豪邸、その門の内。屋敷の殆どを覆い隠してしまうような陰気な雑木はびこる暗闇で、ロナルドは静かな苛立ちを募らせていた。
その身を包んでいるのは、彼の象徴の色では無い。
持ち前の銀髪を覆い隠す、常よりつば広の黒帽子にはいつもの吸血鬼退治の象徴は無く、大きなコウモリの羽が一枚。白いワイシャツに紫の開襟ウエストコート、ご丁寧に銀糸で縁取られた襟は紫。黒くて体のサイズに合ったスラックスはよく伸縮する素材でどんな動きにも着いてくる。
いつもピアスだけは鮮やかに、しかしそれ以外は銀と紫が控えめにあしらわれた黒装束。
白手袋に包まれた指先で、ケープについた首元を覆う黒い襟巻を口元まで持ち上げて、退治人は一つ舌打ちを隠した。
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