おやこあれは、そう。ノラが熱を出して寝込んだ日だ。
雷我は差し入れをもって彼の家へと見舞いに行った。
そのときノラは父親に自分が寝込んでいることを知らせていなかったから、連絡するように言ったのだ。
ノラの父親が帰ってきたのはそれから二時間ほど経った時だった。ノラが薬を飲んで寝てしまっていたので、雷我もうちに帰ろうかとしていた時だった。
「和食、くん……?」
「すんません、お邪魔してます」
軽く頭を下げると、ノラの父親は「ああ、いや。気にしないで。ノラの見舞いに来てくれたんだろう」と手を振った。
ノラの父親は、ノラと全く似ていない。
いや、鼻筋や髪色はよく似ているから親子なのだろうが、あの無茶苦茶な息子と違って生真面目で礼儀正しい。ノラが夜鳴に入ることになったときも、菓子折りを持ってDAAに挨拶に来たのだ。ノラの苦虫を嚙み潰したような顔をよく覚えている。
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