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    hoshiiroiro

    @hoshiiroiro
    基本的に半死の小説をあげます。
    雷ノラ多め。なんでもかくよ。

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    hoshiiroiro

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    むくづとわじきとむくづ父。公式が出してくんないと俺が無限にむくづ父を捏造しちゃうよ~~~~~~!というやつです。昔書いたむくづ病欠話とつながってます。急に始まり急に終わる、ヤマナシオチナシ話。

    ##らいのら

    おやこあれは、そう。ノラが熱を出して寝込んだ日だ。
    雷我は差し入れをもって彼の家へと見舞いに行った。
    そのときノラは父親に自分が寝込んでいることを知らせていなかったから、連絡するように言ったのだ。
    ノラの父親が帰ってきたのはそれから二時間ほど経った時だった。ノラが薬を飲んで寝てしまっていたので、雷我もうちに帰ろうかとしていた時だった。
    「和食、くん……?」
    「すんません、お邪魔してます」
    軽く頭を下げると、ノラの父親は「ああ、いや。気にしないで。ノラの見舞いに来てくれたんだろう」と手を振った。
    ノラの父親は、ノラと全く似ていない。
    いや、鼻筋や髪色はよく似ているから親子なのだろうが、あの無茶苦茶な息子と違って生真面目で礼儀正しい。ノラが夜鳴に入ることになったときも、菓子折りを持ってDAAに挨拶に来たのだ。ノラの苦虫を嚙み潰したような顔をよく覚えている。
    雷我は後日、ノラにその表情の理由を尋ねた。ノラは少し機嫌を曲げて答えた。
    「なんていうか、今なら余計わかるんですけど」と、前置いて。
    「アライバ―気質なんですよね、あの人。仕事が大好きで真面目で義務感が強くて。『こうしなきゃいけない』とか『こうあらなくちゃいけない』とか、そういうの多いんですよ。あの時のも、きっとそう」
    「菓子折りが?」
    「『父親だから』って言うんです」
    それが、気に食わないのだろうか。雷我の母親だって、近い物言いはしたことがある。
    親だから、というのは、責任感からくる言葉だろう。
    ――そう思ったが、その時はそれ以上訊けなかった。
    「ノラの様子は?」
    「今は寝てます。薬飲んで」
    「そうか……」
    「あいつ、ハンデッドになって、こんな風に体調崩すの初めてだから、ちょっと症状が重く出てる。よくあることだから、寝てりゃ治る……けど、明日もしんどそうだったら医者連れてった方がいいかも……す」
    「ああ、わかった。ありがとう。すまないね」
    「別に……」
    「せっかく来てくれたんだ、今更かもしれないが、お茶くらいだそう」
    そう言うと、ノラの父は鞄や荷物をキッチンに下ろし、湯を沸かし始めた。
    「……ノラからメッセージが来ることなんて滅多になくてね」
    マグカップを二つ用意しながら、ノラ父は言った。
    「帰りが遅くなる、みたいなのも、こっちから聞かないと言わないんだよ。面倒がって。それが、急に『熱が出た』なんて来るから。――あれは、和食くんに言われたんだね」
    雷我が頷くと、ノラ父は眉根を少し寄せた。
    「迷惑をかけたね」
    「別に。俺が見舞いに来たこととそれは、また別問題だし」
    こぽこぽと、湯の注ぐ音が響く。
    目の前に置かれたマグカップは綺麗な琥珀色の液体が満たされていた。
    「それに、あんたに連絡を中々寄越さなかったのは――あんたに心配かけたくなかったっていうのも、あると思うし」
    「いいや、信頼されていないんだ、私は」
    恥ずかしいことに、と、ノラ父は自分の分のマグカップに口をつける。
    「言っても仕方がない、と思われてるのさ」
    「…………」
    「ああ、すまない、君にこんなことを言っても。――今のは忘れてくれ」
    「あいつは、」

    何か月か前のことである。
    ノラが珍しく弁当を持ってきたことがあった。
    コンビニ弁当でもなく、購買のパンでもなく、ジップロックに詰まった手作り弁当を。
    「あれっ、ノラくん、どうしたの、そのお弁当」
    穏人の言葉にノラは眉間にしわを寄せた。
    「……父さんが、今日、休みで」
    彼にしては珍しくぼそぼそと、不機嫌そうに言う。
    「有給取らないといけない日なんですって。それで、家にいて、朝余裕があるからって」
    「てことは、それ、ノラの親父さんの手作りか!」
    へ~いいじゃねえか、と明るく言う護に、よくないですよとノラは返した。
    「ほぼ冷食だし、卵焼き焦げてるし。全然良くないです。父親っぽいこと、したかっただけですよ」
    「でも、わざわざ休みの日に早起きして、ノラのために作ってくれたんだろ。ノラ、照れくさいんだろ」
    「はーーーー???まもるくんのくせに勝手なこと言わないでくれます?」
    そう言った、ノラの横顔はやっぱり少し、赤かった。

    「あいつは、あんたのこと、嫌ってはいねえ」
    「え、」
    「どう思ってるかは、知らね。でも。嫌ってはいない、ちゃんと、親として」
    「……ありがとう」
    気を遣わせてしまったね、と言うノラ父に無言を返し、茶を飲む。
    しばしの沈黙が下りたのち、そろそろ帰るかと空になったマグカップを置く、と――
    ごそごそと音がした。ノラの寝室からだ。案の定、ほどなくして寝起きのノラが姿を現す。
    「あれ?らいがくん、まだいたんですか?」
    「今帰るとこ」
    「ノラ、その言い方はないだろう。和食くんは、」
    「え、父さんもいる。早くない?仕事は?」
    「お前が熱だしたって聞いて、切り上げてきたんだよ。熱は?」
    「知らない。さっきよりはマシ」
    そういや親には猫剝がれるんだっけ、と見ていると、その視線に気づいたのかノラがむっとする。早々に退散したほうがよさそうだ。
    「じゃ、俺はこれで」
    「……ああ、ありがとう、和食くん。いろいろと。ほらノラ、礼は」
    「アリガトウゴザイマシタ」
    「ノラ!」
    やんややんやとしている父子に、雷我は心の内で嘆息した。
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