てをつかむどんなものにも光があれば闇がある。嘆かわしいことに。
繁華街の大通りは、明るくてにぎやかで、毎日が祭りのように華やかだ。しかし、一歩裏道に入れば、華やかではない世界も垣間見える。町の中心部だからといって安全ではないのだ。
だから、コウはまだ高校生の少年である彼と待ち合わせをするとき、なるべく支部や病院など、多少待たせても危険のない場所にするようにしていた。わざわざ呼びつけることになってしまうのは申し訳ないが、自分の用事が長引いてしまうパターンも多いので、やむをえまい。あの雑多な人ごみのど真ん中で待たせるよりはいいだろう。
しかし、今日は、事情が違った。約束のネコカフェは繁華街の雑居ビルの二階にある。さらに、ノラは午前中別件で町に出ていた。
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