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    hoshiiroiro

    @hoshiiroiro
    基本的に半死の小説をあげます。
    雷ノラ多め。なんでもかくよ。

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    hoshiiroiro

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    【ノラコウ】繁華街で絡まれるむくづを助けてもらう話
    付き合ってないけど、とっても仲良しなのでいちゃつきます。
    無配にしようとしたがあんまり無配向きの話じゃなくなってしまったので供養。

    ##ノラコウ

    てをつかむどんなものにも光があれば闇がある。嘆かわしいことに。
    繁華街の大通りは、明るくてにぎやかで、毎日が祭りのように華やかだ。しかし、一歩裏道に入れば、華やかではない世界も垣間見える。町の中心部だからといって安全ではないのだ。
    だから、コウはまだ高校生の少年である彼と待ち合わせをするとき、なるべく支部や病院など、多少待たせても危険のない場所にするようにしていた。わざわざ呼びつけることになってしまうのは申し訳ないが、自分の用事が長引いてしまうパターンも多いので、やむをえまい。あの雑多な人ごみのど真ん中で待たせるよりはいいだろう。
    しかし、今日は、事情が違った。約束のネコカフェは繁華街の雑居ビルの二階にある。さらに、ノラは午前中別件で町に出ていた。
    『弟と会うんです』
    「へえ。どこか行くのかい」
    『…………カラオケ』
    思わず笑ってしまった。DAA幹部のソロ曲がカラオケ収録されたという報告書を読んだのはつい先月のことだ。
    『ちょっと、せんせい』
    窘められて、軽く謝罪する。
    「普段から行くのかい、カラオケ。あまり話を聞かないけれど」
    『時々は。嫌いじゃないですよ。ワイワイするのは楽しいし、夜鳴に入ってからは結構歌い慣れて上手くなったし。まあ、うちの近くは古い機種の店しかないので、頻度はそう多くないですけど』
    「古い機種は、最近の曲が少ないのかな」
    経験がないので尋ねると、ノラは「ええ」と肯定した。
    『数とバリエーションが全然ダメ。有名どころしかなくって。あ、でもこの間、はくしまさんの曲歌いましたよ。難しすぎて全然歌えなかったけれど。……って、カラオケの話はおいといて』
    ネコカフェなんですけど、とノラは続けた。
    『そのカラオケがネコカフェのあるビルの近くなんです。下手に駅に戻るのも面倒なので、当日は現地で待ち合わせでいいですか?弟とも、三時までの約束なので。三時過ぎに、ビルの下で』
    「ああ。構わないよ。ただ、気を付けて」
    『はーい』
    間の抜けた返事。己の忠告のどこまでが本気で受け取られたか。当日はなるべく早く到着して待たせないようにしよう、と思った。
    思った、のだが。
    (三時半……)
    腕時計の時間を確認し、気持ちが焦る。
    突然のトラブル対処で大きく出遅れてしまった。
    ノラには先ほど、店に入っていてくれとメッセージを送った。返事は五分前に。
    『あと十五分くらいなら待ちますよ。あそこ、時間制限制なので』
    申し訳ないな、と早歩きで通りを渡る。
    件のビルは大通りから一本曲がったところにある。
    高いビルに挟まれて少し暗い道に入り、ネコカフェのビルーーの前に少年がいない。

    「あのー、本当にやめてくれません?ぼく、もう行かなきゃいけないんで」

    聞きなれた声。
    は、とあたりを見た。
    さらに一本入った路地裏で、空色の少年が、闇色の大人の男たちに囲まれている。
    男は三人いて、年は若いようだが、ノラやコウよりずっと体が大きい。
    ノラはビルの壁に背をふさがれ、男たちを睨みつけていた。
    「そう言わずに、ちょっとさあ」
    「こっちは相手してるほど暇じゃないんですよ」
    「うそだー。暇そうにしてたじゃん」「人数足りなくってさあ」
    「マジでしつこい。もう行き、」
    ノラの言葉が固まる。
    男の間を通り抜けようとした拍子に、腕を掴まれたのだ。
    「放せ……ッ」
    「うちの店すぐそこだからさ、ね」
    「放せって、」
    荒げられた声で、我に返った。
    「藻津くん!」
    声を上げる。驚いた瞳がこちらを射抜く。せんせい、と唇が動いた。
    男たちもコウの存在に気付き、眉をしかめる。
    「……何か」
    感情に理性で蓋をして、極めて冷静に言葉をかける。男は舌打ちを一つして、ノラを解放した。
    路地裏の向こうへと立ち去っていく。
    コウはすぐにノラのもとへと駆け寄った。
    「藻津くん、大丈夫かい」
    「あ、はい。まあ」
    いつもの調子の返答にひとまず安堵する。この手のトラブルに怖気づかない子だとはよく知っているが、それでも、だ。彼はおそらくコウとの約束があって事を荒立てられなかったし、喧嘩沙汰ではなくああいった輩に絡まれるのはそう慣れていないはずだ。その結果――
    先程のノラの瞳を思い出す。動揺と困惑の色。
    彼の右手首には、よほど強く掴まれたのか、赤い痕が残っていた。
    「……――――」
    男たちの立ち去った方向へ吐き捨てる。小声のスラングは、路地裏に投げ捨てられて、誰も気づかないだろうが。
    「せんせい?」
    「いいや、なんでも」
    ノラに微笑んで見せる。それから彼の右手を掬うように手に取った。赤くなったところをそっと摩る。ノラは少し驚いて、でも何も言わなかった。
    「――すまない、私が遅れたばかりに」
    「そんな気にしないでくださいよ。全然大丈夫でしたし」
    「でも、」
    「んー、じゃあ、」
    ノラは首を傾げ、くりくりとした瞳でコウに訊ねた。
    「――ネコカフェのあとも、かまってくれます?」
    「……あまり、夜遅くならなければね」
    「わーい」
    じゃあまずはネコカフェですね、とノラは己の手に添えられたコウの掌を掴んだ。
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