ポメアディアン 疲れた。
仕事を終え、体を清めた僕の口がそう動いた。
今まで傷つけてきた人達の顔。人を殺す事でしか生きていくことが出来ない自己嫌悪。それらが思考を黒く埋めつくし溢れ出す。
水滴として落ちていくそれをぼんやり眺めながら、階段をのぼり、二階にある自分の寝室の扉を開けた。
暗い部屋。
誰もいない部屋。
今の自分の脳みそみたい。
そう思うと入れなくて、入ったらもう二度と出られなくなりそうで、僕は後ずさった。
自然と足は階段に向かい、登っていく。そしてたどり着いた 3階丸々使われた部屋のドアを開けた。
ここにも誰もいない。この部屋は、一週間に1,2回しか寝室として使われないのだ。
けれどここは自分の部屋よりも物が多いし、ずっと明るく見える。そしてなによりこの、爽やかでほっとする大好きな匂いが、僕の脳を埋め尽くす黒を少し拭き取ってくれた。
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