拐ってしまいたい。人の少なくなった大通りにて。追ってくる車から逃げる為に、なりふり構わず全力疾走をする。アイツに捕まったら何もかも終わる。そう思って、ただひたすら交番を目指して走る。
履きなれた革靴も、動きやすさを重視したスーツも、運動には全く不向きだった。小指の付け根、足首が靴で擦れて痛みを感じる。汗が吸収されない上着もベストも、かなり前に脱ぎ捨ててしまった。
「ッの、クソッがっ…!」
口内は血の味がする。こんなに必死に走り回っているのに、人は一人もいない。都内の深夜にしては、やけに不気味だった。
「ッだ…ァ!」
人より体力があると自負していたが、それもとうとう尽きて足がもつれ転ぶ。布越しとはいえ、コンクリートで擦られた膝がジリジリと痛む。
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