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    再走(サイソウ)

    @saisoh_t

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    POIPOI 14

    再走(サイソウ)

    DONE膝膝webオンリー「蛇の恋は薄緑色2」開催おめでとうございます!!
    TL膝膝企画で書いてきた三編の最終章です。恋心を自覚した別本丸出身の二振り目と、彼の相手を勘違いしている世話役の一振り目の話。
    前回までを未読の方は「触れては積もる」→「積もりて傾ぐ」→「傾ぎ流れる」の順でお読みいただくことをお勧めします。
    ひとまず今回で一旦完結です!
    ※二振り目が薄緑と呼ばれています
    流れ交わる「手合わせ?」
     それは突然の申し出だった。
     遠征を終えて部屋に戻ってきた膝丸に、待ちかねた様子の薄緑が声をかけてきたのだ。見れば非番だというのに戦装束を着こんでいて、すっかり支度を整えていたことが窺える。
    「別に構わないが……」
    「では、道場に」
     迷いなく先導する薄緑は、すでに道場の使用許可も得ているようだった。その準備の良さに、後に続く膝丸は内心で首を傾げる。
     彼がこの本丸に来て二年、実のところ手合わせを行うのはこれが初めてだった。もともと薄緑の方が練度が高かったとはいえ、段位は同じ特二同士。今ではその練度差も少し縮まって、薄緑はすでに上限、膝丸も上限まで十を切っている状態だ。
     ――なぜ今になって、というのが膝丸の正直な感想だった。
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    再走(サイソウ)

    DONETL膝膝企画、三回目の開催おめでとうございます&ありがとうございます!
    前作(https://poipiku.com/4918557/11429448.html)の続き、「懸想している」と自覚した別本丸出身の二振り目と、彼の片思い相手に思い当る世話役の一振り目の話。
    終わらせるつもりだったのが続いてしまいました…。
    ※二振り目が薄緑と呼ばれています
    傾ぎ流れる 空調の風が規則的に首筋を撫でては遠のいていく。温湿度が管理された書庫で、薄緑は今日も何冊かの書物を紐解いていた。
     書庫のすみに設えられた机の上に、まるで塔のように積みあがっているのは、いずれも恋愛に関する本である。医学的なものから風俗的なものまで、とにかく恋愛について触れたものなら見境なく本棚から抜きだして、ただひたすらに読みふけった。すべてはあの日、「まるで相手に懸想しているようだ」と膝丸に言われた一言がきっかけだった。
     ――しかし、果てしない……。
     非番のたびにこうして書庫を訪れるようになって二週間ほど経つ。これまでに読んだ本の数は……端から数えてなどいなかったので不明だが、その感情の底知れなさを証明するように、いくら知識として身に着けても自分事として咀嚼できるかはまた別問題だった。
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