初期にかいたやつ 天上で輝く大樹に、こりゃあ絶景だなぁ、以上の感情を抱いた事はない。この地ではどうだか知らないが、少なくとも他所から流れ着いた私にとってアレは神ではなく、ましてや支配者ですらない。巫女すら与えられなかった私はおそらく、そもそも此処へ流れ着くべきではなかったのだろう。此処へたどり着く運命のようなものを与えるばかりで歓迎すらしない神を崇拝するほど私の人生は穏やかではなかった。
代わりに私は、きっと何者にも成り得なかった私へと唯一差し伸べられた手を信じることにした。
その手は血の通った肉を持つ、豊かに燃える魂を持つ人間だった。
何時も布で丁寧に覆われ、顔すらもすっかり隠した不思議な人。体に染み付いているのであろう、滴る血の香りを纏う怪しい人。
1029