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    kntr_g

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    kntr_g

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    褪ヴァ
    初期に書いたやつ
    手直しはしていません

    ##エルデン

    初期にかいたやつ 天上で輝く大樹に、こりゃあ絶景だなぁ、以上の感情を抱いた事はない。この地ではどうだか知らないが、少なくとも他所から流れ着いた私にとってアレは神ではなく、ましてや支配者ですらない。巫女すら与えられなかった私はおそらく、そもそも此処へ流れ着くべきではなかったのだろう。此処へたどり着く運命のようなものを与えるばかりで歓迎すらしない神を崇拝するほど私の人生は穏やかではなかった。
     代わりに私は、きっと何者にも成り得なかった私へと唯一差し伸べられた手を信じることにした。
     その手は血の通った肉を持つ、豊かに燃える魂を持つ人間だった。
     何時も布で丁寧に覆われ、顔すらもすっかり隠した不思議な人。体に染み付いているのであろう、滴る血の香りを纏う怪しい人。
     ヴァレーと名乗ったその人が私を駒としか見ていない事くらいは、愚かな私でも直ぐに察しがついた。
     きっと幾人にも似たような言葉をかけてきたのだろう。私が特別ではないことくらい、もちろん知っていた。
    「いい子ですね」
     そう囁く彼の瞳が、穏やかな声色とは裏腹に冷めきっている事くらい。柔らかに私の頭を撫でる手に一切の感情が乗らない事くらい。もちろん解っていた。
     私は、彼の願いを叶えるための便利な道具の一つなのだろう。
     しかしそれでも、否だからこそ信じるに足ると確信するのだ。
     何を考えているのか、そもそも思考などあるのかすら怪しい神よりもずっといい。そんな曖昧なものを信じられるほど、私の人生は穏やかではなく、また私の精神は強靭でない。
     それに比べ、ヴァレーの望みは実に解りやすい。殺して、殺して、殺す。幸い得意な分野だし、人殺しに逐一感情が伴うほど豊かな人生を送っていない。
     間違いなく私は、有能な駒であるはずだ。
     真っ赤に染まる手を見る度に、心が弾む。これでまた更に、彼に必要とされるはずだから。
    「いい子ですね」
     見知らぬ誰かを殺すたびに囁かれる言葉。その度にそう囁かれるだけで、私の矮小な魂はすっと軽くなり、ぬるい熱がともる。柔らかく撫でられる度に、体の形がはっきりとする。必要とされている。それだけで、彼を信じる事ができた。
     嗚呼だから私の星よ。どうか私を見捨てないでください。
     今日も私は、仮面の奥から響く声を待つ。私の信じる唯一。私を形取り熱を与えてくれる、彼の言葉を。
     貴方の信じる王を、きっと私もいつか信じるから。だからどうか導いてください。きっと全てを叶えましょう。
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