夜明けを告げる者朝は日が昇るよりも早く始まる。
井戸から水を汲み、顔を洗う。朝の冷ややかな空気が肌を刺す。
最も森の呼吸が聞こえる時間。
「マナの制御は?」
私の気配で先生も起き始める。薬草を鍋にかけ、果実の皮を剥きながら答える。
「やってる」
「ん?」
「……やってます」
「よろしい。記録はどう」
「気温は例年通り。魔力の流れの方が気になる。午後は外でサンプルを取りますか」
「マナを読み取る方が得意なのは分かるけれどね。水質の変化の方が深刻。気づかなかった?」
先生の周りには妖精が漂う。その一つ一つに挨拶を交し、窓辺で草笛を吹き鳴らした。
妖精の森がその呼びかけに応える。枝を揺らし、葉を輝かせ、先生に木魂を送るのだ。
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