槍と槌朦朧とした意識の中で、鈍い痛みが広がる。頭を強く殴打したのか、記憶がぶつ切りだ。
視界を奪われた眼球があらぬ方向に揺れ、手探りで宝飾を探す。体中がひどく痺れているのか感覚がない。脈。指先が脈に合わせて震えている。鼓膜が切れたかのような静寂と頭蓋を叩く耳鳴り。口の中がやけに渇き、汗で張り付いた紙が不快だ。意識が覚醒しているのに身体は鉛のように鈍い。
一拍の呼吸をおいて角を肥大化させる。青く拡張する自分の骨が冷ややかな空気に触れた。牙の神経を指す痛みはまるで変貌を拒んでいるようで滑稽だった。
薄ら笑う。何を恐れることがあるのか、誰もいやしないのに。
「ウィスプ」
その問いに応えはなく、ただぼんやりと光が浮かぶ。
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