金の嘴 ラージャハを占拠していた蛮族は退けられ、現在街は復興に向けて動き始めている。
束の間の休息だった。依頼人とも合流し、列車に乗るまでの僅かな期間。
そんな時だった。男が俺の元を訪れたのは。
「おい、そこの」
誰のことか分からずに素通りしようとすると、老齢のドワーフが立ち塞がる。
「お前だ。ベク」
俺の肩ほどまでしか身長が無いが、男から感じられる武人としての威圧は充分すぎるほどだった。
「……ベク?」
「ベク・ド・コルバン。名が長い。俺は好かん」
ドワーフは蓄えたひげを撫でて、俺を見上げる。
「試合を見た。妖精魔法を扱うのか」
俺は腰から下げた妖精の宝飾を指でなぞる。その動きを視線で追った老翁は、またひげを撫でた。
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