といて、むすんでアベル様の道具であり所有物として必要とされることで朧げだった自身の輪郭がはっきり形を帯びていった。役割を与えられ、この身が役に立つならば命も惜しくはない。やっと存在意義を見出し、あなたの手足となっているときにようやく生きていると実感できた。
だからあの時も
「アビス……!」
この身を貫かれながらもアビスは生きている意味をひしひしと感じていた。
元より生まれてくるべきでなかった存在。母に殺されかけたのにたまたま生きながらえてしまった身だ。誰からも望まれぬ、ただ徒に生きながらえるだけならば初めて自分を必要としてくれたあの方の盾になることに何の躊躇も恐れもなかった。
「逃げて……くだ…さい」
私なんか捨て置いて逃げてほしい。
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