ぼくらはスクランブル交差点の真ん中で都会の入り組んだ高速道路のような、縦横無尽に行き来することの出来るスクランブル交差点のような、そんな在り方だと思った。
交わっているのに交わっていなかった道が、ある時悪戯に交わって。またそれぞれの道を行き、時々交差点でまた出会う。
伸ばした手は重なっているのに届いていない。交わした言葉は交わしただけで満足して、ぽつりと冷たい地面に落ちる。
あの日輝かしく始まるはずだった、もう手に入らない舞台を懐かしく想う。
不思議ともう一度やり直せるなら、という感情は湧いてこない。
あの頃の思い出は、温かいのに触れていてもいつまでも手が温まらないような、そんな感覚。
体の芯を冷やした記憶が、ずっと残っていて。
——ああ、この感情を どう名付けようか。
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