無題 来馬がそれを二宮に相談したのは、たまたま大学構内で行き合った二宮に「何かあったのか」と聞かれたからで、別の誰かに聞かれても同じように相談していた。しかし、二宮より先に声を掛けた人物がいたとしても、来馬の異変に気付くことはなかっただろう。
「ストーカーされているのか?」
「かも、だよ」
明け透けな発言をやんわりと否定された二宮の表情は変わらなかったが、二人並んで座ったベンチで組んでいた足を入れ替えたのは苛立ちを逃すためだった。
「日常生活で誰かの視線や気配を感じるんだろ?ストーカーじゃねえか」
「ずっとじゃないよ」
「じゃあいつなんだ」
「ボーダー本部のラウンジとか、本部と鈴鳴支部までの道中とかかな。あと最近は支部の周りでも感じる」
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