ナイフ「……迷子だね」
「そうだな」
そんな分かりきったこと、当てもなく砂の上を歩き始めた頃から知っていた。二人はお互いに視線を合わせることなく、殆ど同時に歩みを止めた。
「地図は?」
「携行用のは拠点に置いてきたかも」
「……端末は?」
「手元にはあるけど、実質使えない状態だね。ビーコンの情報が送られてきていないみたいだ。電波も来てない」
「……方位磁石、サバイバルキット、」
エンカクがそこまで言ったところで、ドクターは彼にまるで“お手上げだ”と言わんばかりに腕を上げて手のひらを見せた。こいつが凡人だったら既に殴りつけているところだろう。一瞬だけ握りしめた拳を抑えて、エンカクは岩場に身体を預けた。歩き方に気を付けなければならない荒野を歩くのは、思っている以上に体力を使う。ドクターも、もたもたと岩場をよじ登り、少しだけ平らになった岩場に座り込む。
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