A crush on you「大丈夫か」
梯子を登って、掛けてきた最初の言葉がそれで、勝太はこっそり苦笑した。
身にまとった毛布で口元を隠していると、目の前にマグカップが差し出される。甘くてほんのり香ばしい匂いがする。
「大丈夫、なわけねーだろ!」
ほころんだ顔でマグカップを受け取ったはずが、勝太の口から飛び出したのは表情とは真逆の、厳しい言葉だった。ついでにしゃがもうとしたドラゴンの太ももをゲシゲシと蹴り付ける。大して痛くもないだろうが、うっ、とドラゴンはうめく。後ろめたいところがあるのだから、それも仕方ない。ふふん、と鼻を鳴らして、勝太はマグカップに口をつけた。クタクタになった体に甘いココアが沁みる。いくらか飲んでほっと息をついていると、隣に大きな体躯が座った。当然のように体重を預けても、気にする素振りもない。事後であってすら、ドラゴンには勝太を特別意識するところがないらしい。スキ、とか、コイ、とか、よくわからない、と心底困ったように言われたことを思い出すと、しみじみ、こういうことか、と思わされて悲しい。結局、勝太はムスッと顔を顰めた。
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