仕事を終えた午後八時頃。久々に夜の仕事も無く、次の日の昼間は休みである。何をしようかと考えながら自分の部屋に帰る途中スマホが鳴った。
画面には友人の名前が映し出されている。指を滑らせて電話に出た。
「どうした?」
『あ〜三木クン? スマンなクワさんやで』
聞こえてきたのは友人の担当編集の声だった。思わず端末を耳から離して画面を見直すが、映っている名前は変わらない。
「……神在月先生に何かありました?」
訊きながら脳内でシンジの直近のスケジュールを思い返す。締切がやばい日付じゃない。確か何かの会合が――
『今日の懇親会でな〜、神ちゃんセンセがべろべろになってもーて……』
「何やってんですか担当作家の酔い管理くらいしてください」
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