少年の一生あるところに少年がおりました。その少年はなんてことないありふれた少年で、誰の目にもつかないような人でした。人並みに、生きて、死ぬような人でした。
彼には家族がいました。姉がひとりと、兄がひとり、父と、母です。少年は一番下でした。喧嘩が弱くて、泣き虫で、大声で泣いていたので、周りからはよくやっかまれたのですが、全く自覚がないまま順当に大きくなるのでした。
毎日通っている学校の先生が、優しいひとになろう、と、よく言うので、真っすぐで素直な少年は優しい人になろうと頑張ります。真面目に取り組んだ少年は思いました。優しいひととは、いったい、どんなひとのことを指すのでしょうか?
「優しい人」とは、そのこどもにとって、まだまだ未知のものでした。
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