もう自分の爪すらうまく切れない。
切れ切れの咳交じりのため息が出た。
年老いた自分の親を見るたびに、将来の自分の姿を見るようで
田舎に帰る度うんざりする。
誰もが辿る道を怯えている。
昔からああなりたくないと思っていたのに、同じ姿になる自分がなにもできないままであることもなにもかも。
妻に叱られて、何も言い返さないのか、聞こえていないのかすらわからない。
この先ずっと続くのだろうか。
今日壊れた車の修理に二十万ほどかかると見積もりが出た。
これを持って、妻にそれとなく新車の話を持ち出す。
またすげなく「そんな金どこにあるの」……
車は十五年以上乗り続けていた。