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    Metyo

    @metyo_v066

    一次創作です
    全体的にとても暗い
    短いものと詩を好きなように書いてます!

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    Metyo

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    金平糖私は弱虫だ。怪我ばかりで、泣いてばかり。
    おばあちゃんからもらった、小瓶に詰まった金平糖。
    なんだか勇気が出ないなって時に魔法の言葉唱えて一粒食べると願いが叶うと言われて渡された。少女はそんな小瓶を毎日大切に抱えていた。

    ある日、私と同じようなひとがいた。
    少女は金平糖をあげた。その小瓶にはちっぽけな勇気がきらきらと詰まっていた。
    もうその小瓶を少女はあげられると思った。

    おまじないと金平糖は、ちいさな勇気を与えるもの。

    少女からもらった金平糖。
    大人はさすがに魔法だとかそんなものにはなびかない、なびきたくても無理だった。
    女の悩みが尽きることはなかった。
    会社から出るとその足でコンビニに寄る。夕飯の惣菜や酒を買うと、一目散に家に帰る。
    いつもならそう、いつもなら。

    真っ暗な道の、ポツンとある自動販売機に照らされて、足元に二本も三本も影が伸びているのに気付いた。それから、ずっと足元を見て歩いていた自分にも。
    微動だにできず、影の数を数えた。一、二、三……ふと、日々のことを思う、例えば人生の。
    背中からヂラヂラと照り付けるまぶしさにもまた、虚しさを覚えて。



    「ああ、またこれは厄介だ」
    暗闇を背負って知らないおばあさんが音もなく現れた。いかにも怪しげな風貌でいて、魚の鱗を纏っているみたいに湿っぽく反射している布を頭からかっぽり身体を覆っていていた。。
    おばあさんは腕捲りして突然女の胸に拳を鋭く振りかざした。腕は胸部をすりぬけると、空間を思い切り握りしめて、ひねって、ぐいと引き抜いた。それは野球玉の大きさで、つまり金平糖を河豚みたいに膨らませた形をしてぼんやり光っていた。


    おばあさんが、空に向かっておもむろに手を一振りすると、星座の地図を広げた。
    「ところできみは何座かね?」
    あまりに信じられないことが起きていて心の底から困惑しているのに、どこか昔に味わったパチパチと小さく弾けて湧き上がるあの瞬間をたった今、舌の上で転がした。胸が震えて、声になって出た。おばあさんはわかったと視線を上へ向ける。そして指で地図をなぞり懐のどこに隠していたのか、金づちを取り出した。
    「えっ!」
    「さぁ、よくご覧……生まれ変わるぞ」
    おおきく金づちを振りかぶったかと思うと、金平糖に打ち付けた。
    わっとあたり一面に風が吹き、火花が散り、星が生まれた。
    そのまま空へ飛散していく様を女は見た。

    おばあさんは小瓶を持つと、夜空の星をひとつまみして、そいつをコロンと入れていく。

    小瓶の半分以上になったあたり。
    手を出しなさい、その声につられて差し出した女の手に、その金平糖の入った小瓶が乗せられた。
    「大人は厄介じゃの、子供以上に手間がかかるがな」


    私は弱虫だ。怪我ばかりで、泣いてばかり。
    おばあさんからもらった、小瓶に詰まった金平糖。
    なんだか勇気が出ないなって時に魔法の言葉唱えて一粒食べると願いが叶うと言われて渡された。大人はそんな小瓶を毎日大切に抱えていた。
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