奥底に隠していた心を、引き摺り出さないで欲しかった。それが愛だとお前は言う。
『今からお酒飲まない?敬一くん家で!』
年に何度か開催される、投資家仲間との懇親会終わりの帰り道。携帯へ届いたのは簡潔な誘い文句だった。
(おいコラ、今何時だと思ってんだコイツ……!)
明るい画面の右上には、「22:47」の数字が並んでいる。およそ人を誘う時間ではないし、獅子神も普段なら寝に入る準備をする頃だ。
こんな夜遅く、いきなりアイツらに来られて騒がれたらたまったもんじゃない。元々予定しているならともかく、家には何の準備も揃ってないのだ。
それなりに気疲れした体でテーブルを整えて、つまみを作って、遊び道具を出して……やることを考えたら断る一択しかない。が、断っても来そうではある。
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