「あっやべっ!またこんな時間じゃねえか!」
近頃は、部室に二人で残って練習計画などを練っていると、どうしても時間を忘れて取り組んでしまうことが多くなった。部活のことはもちろん、NBAの選手の話題、全国の強豪たちの話などもするようになり、次から次に話題は尽きない。
桜木が「お前、あれさ、」と唐突に切り出す話題にも流川は存外まじめに聞き入り、「どう思う?」と問えば言葉数は少なくても意見をきちんと聞かせてくれる。水戸たちと一緒にいるときのように大爆笑でやんややんやとポンポン話が弾む、というわけではそこは流川相手なのでほとんど起き得ないが、それでも、部誌のページにペンシルを走らせる音や遠く聞こえる吹奏楽部の管楽器のソロフレーズ、窓の外の虫の声なんかに混じるように交わされる落ち着いた言葉やその時間は、いつしか桜木にとって心地いいものになっていた。
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