旅人と四神 四、白虎 長い長い山道を、数日ほどかけて降りきったその先。少し開けた山の中腹から見えたその街並みは、盆地の中に石造りの建物が所狭しと並んでいる。高いものはないが、綺麗な四角を描いた個々の白は道を挟んで両隣に整列し、今まで訪れた領たちとは一風変わった景色をかたち作っていた。美しい街並みに感嘆の溜息を吐きながらも、旅人はゆっくりと下り坂を降りていく。目的地であった白虎領は、既に目と鼻の先に迫っていた。
西に位置する白虎領は、この国の政治と学問を担う街だ。他の領と違い、この領だけが石で出来た建物を纏っている。どうやら聞くところによると、国に関する重要な書物や巻物を厳重に保管するためだという話らしい。確かに火災や洪水という点に置いては木より石の方が丈夫なのだから、理には適っているのだろう。ただ、それ以上にきちりと切り取られ置かれた白石が一寸の隙間もなく組み上がり建物を作っているさまは、一種の美術品にも見て取れた。
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