七五三話 十一月十五日。一般的に七五三の祝い日とされている今日、甲斐田は一人、皇国の中心部から少し外れたとある神社へと訪れていた。
「えーと、奥から三番目の列の……左から……か、か、加賀美……あった」
所狭しと角切られた石が並ぶその場所の一角。加賀美の名を彫り込んだそれはこの神社の官史が言っていた通り、そこに在った。来訪者を久しく迎えていないのか、石造りの花瓶には何も入っていない。そこへ、甲斐田は持参していた菊の花を丁寧に差し込んでからゆっくりと手を合わせる。長く、長く、想いを込めて。
空はひどく澄んでいて、青く、鮮やかだ。そんな青天の下で甲斐田はたっぷりの時間を使い祈ってから、一度目を開くとそうっとその石を──墓石へと向き直った。
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