今々昔々、ある天界に一人の天使がおりました。大変真面目なその天使は、同僚や部下からも慕われているような素晴らしい天使でありましたが、少々好奇心旺盛であるところが玉に瑕でした。
天使たちは地上の様々な魂を天界にある魂の休息所へと迷いなく案内する仕事が主でありました。彼の天使も天界から地上に降り立っては仕事のために魂を導いておりましたが、常々その仕事をこなすうちに天使の中にとある感情が芽生えるようになっていました。しかし、それを口に出せばきっと周りは物珍しい目で自分を見ることでしょう。故に彼の天使は、その感情を誰かに話すことはありませんでした。
とあるとある、晴れた昼下がりのこと。天使はいつものように地上へ仕事のために降り立ちました。あちらこちらを行き交う人間たちの合間で仕事の対象を探し、辺りを見回します。その双眸には、まるで宝石のように輝く魂たちがまるでオークションのように映り込んでおりましたが、その中でも一際眩しい魂を彼の天使は見つけました。
1908