farewell入相の刻、夕空が淡い菫へと染まる中。
肩を落として歩いていると、小さな立て看板が目に入った。
普段は気にも留めないその文字列に誘われるように、私は大通りから一歩入った小道へと足を踏み入れていた。
辿り着いた2階建ての建物の1階部分、奥まった場所にある入口の周囲にはランプやドライハーブといった装飾が添えられている。
『占星術 Vesta』
店名だろうか、そう刻まれた銀製のプレートが掛けられた白い扉をおそるおそる開けた。
ちりん、と銀製のチャイムが鳴り、植物性の香が自分を包み込む。
落ち着いた暖色の照明が灯された室内には星をモチーフにした調度品や蝋燭が置かれ、柔らかなヴェールが壁に掛かっていて、隅には小さな暖炉もある。
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