「零くん、これは」
「ああ、今夜辺り雪になるらしいから出したんですよ、炬燵」
「コタツ…!」
都内某所のマンションの一室。
いつもはシンプルな家具が置かれているだけの男の部屋に、この日は可愛らしいオレンジ色が広がっていた。
ふかふかと柔らかそうな布団。その上にある木板には、カセットガスとガスコンロが置かれている。
赤井秀一の身体には日本人の血が流れてはいるが、彼自身が日本に居た期間は非常に短い。人生の大半は海外暮らしの彼にとって、日本が誇る暖房器具は、それはもう、輝きに輝いて見えた。
今夜の夕飯は鍋にしようと昼食時に言っていた通り、土鍋で出汁を取りながら白菜をザクザクと刻む降谷に、赤井秀一はキラキラとした瞳で駆け寄った。
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