咲かなかった恋心 荘園にいた頃が夢幻であったかのような平和な日々が流れていく。
共にいた仲間たちも、どこか遠くの場所で同じように思っているのだろうか。
別の時代の、別の国で生まれ育ち、たまたま荘園の主に招待を受けた私たちは、本当に奇跡的な出会いを果たして同じ時間を同じ空間の中で過ごすことが許されていた。
(だから、今は正常な日々に戻っただけ。寂しがることなんてない普通のことなんだ)
大企業の社長だった父が経営難に陥り、全てを捨てて失踪し多額な借金を背負った我が家と路頭に迷いかけた数千人の社員たちのために私は“あのゲーム”に参加することを決意した。
無事に脱出できたし、借金を返済することができたからよかったものの今思えば己の無謀さ加減には冷や汗ものだ。
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