「――いやね、関口さん。先一昨年が寅年で和寅さんでしょ。で、昨年は辰年で僕ですから、惜しいですよねえ。榎木津さんが卯年ならすっきりするのに」
「…何の話だい」
「名前ですよ名前。和寅さんの寅って寅年のトラでしょう。僕は龍一ですからね。龍はタツ。辰年ってね」
「ああ、それで寅と辰の間の卯が榎さんだったらと」
「そうですそうです。事務所三人が並べば面白いなと思ったんですがね。でもあのおじさんには兎なんて要素これっぽっちもありませんからねえ。強いて言えば色が白いってところですか」
「黒い兔もいるだろう」
「何にせよ、すっきりしないっつう、なんてことのない話です。まあ、榎木津さんが寂しいなあんて言い出したら世界がひっくり返っちゃいますよ。けけけ」
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