「あ」
ぱきり
ついにこの時がきた──卵のために森の奥に移り住み、1ヶ月ほど経った頃についに殻に最初の傷がつきはじめた。
ざわめく召喚獣たちが集合し覗き込んでくる。そうだね、君らのお世話の賜ね!
巨大な蝶の暖かい羽毛に包まれた卵が、内側からの振動でゆらっ・・・ゆら・・・と揺れる。そしてヒビが入ったところが少し大きくなり、パリッと破片が剥がれ落ちた。
そこから最初に現れたのは、小さな爪。
それが緩慢に動いてパキパキとヒビを広げていくのを、両手を組み固唾をのみながら見守っていく。と、やがて上半身が現れたので、もういいかとふわふわのタオルで包み込みながら取り出してやった。
てんやわんやと騒ぎ立てる召喚獣たちに見せるように、五体満足で産まれてきた子竜の身体を確認する。
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