【ギンミツ】元カノ電凸企画 リキッドファンデーションがブラシで伸ばされ、コンシーラーで目元の隈と赤みが消された。無駄な粉を落としたパフで肌を撫でられて、その後にハイライトだシャドウだチークだをいれて、散々いじくり回してから、ヴィクターは俺の顔を解放した。
渡された手鏡を覗き込む。そこにはいつも通りの俺がいた。
「……ありがとう。さすが、完璧だね」
ヴィクターが満足げに微笑む。少し化粧は濃いかもしれないけど、きっと大丈夫。恋人と別れて泣き腫らした目も、カメラ越しじゃわからないだろう。
俺は1週間前、大好きだった恋人と別れた。ずっとずっと憧れていた人と紆余曲折を経て付き合って。だけど、たぶん最初からうまくいってなかったんだと思う。3か月の短い交際期間は喧嘩と仲直りの繰り返しだった。今回の喧嘩もいつも通りで、でもお互いの虫の居所がいつもより悪かった。
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