Sweet pain2月も半ばに差し掛かる頃。
今日も遅くまで流川と桜木は残っていた。
汗でベタベタになっている床にモップをかけ、体育館を後にして、桜木が校門にいる警備員に「ご苦労さん」と挨拶し、続けて流川がぺこりと頭をさげてから帰路に着く。
あたりはすっかり暗くなっていて、二人以外に誰もいなかった。いつもの見慣れた風景である。
雪は降ってないけど、風はまだまだ冷たく、頬が切られるようだった。
「さーかえんぞ」
ダウンにマフラーと完全防寒して、ギコギコと愛車を引きながら歩く男に、学ランだけでとぼとぼついていく。そんなに着込んで、顔も白いから、のぼせてしまっている。
今日はまっすぐ帰る日だった。
その荷台に跨るまでは、まだ何日かある。
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