無題優桜
俺たちはさっきからベッドの上にいる。別にこれから何か起きるだとか、もう起きたとかではない。俺の兄は隣で寝転がりながら明日の小テストの範囲のページを読んでいた。
「……あ」
桜が口を開く。俺はベッドの近くの机から、置いてあるクッキーを取り、その口にそっと入れてやる。彼の視線は変わらず教科書の字をなぞっている。
「…………なんでプレーンばっかなんだよ」
「え? プレーン好きでしょ」
「チョコだろ普通」
チョコのクッキーはここには置いてないのだが……。今日学校帰りに買ってきたパン屋のクッキーの味はプレーンと抹茶のみである。
「今度あったら買ってくるよ」
「よろしく」
彼の目は真剣に教科書を見ていた。暗記を得意とする桜だが、今回は覚える部分に漢字が多いので苦手とするらしい。僕は幸い、普段から復習を怠らないので特に勉強しなくても8割の点を取れるのだ。
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