柔らかい光が降り注ぐ窓際のテーブルで、熱々のピザを臼井が切り分けていく。色素の薄い髪が光を透かし、その眩さに俺は思わず目を細めた。
俺と臼井は練習後、間食と観光を兼ねて有名な製菓メーカーの喫茶室に訪れていた。この店は珍しくピザローラーでは無くキッチンバサミを使うようで、臼井は左の手で湯気が立つピザを押さえながら、あっという間に八等分する。
熱くはなかったのだろうか、そう思いながら手を拭く臼井をぼんやり眺めていると、目を伏せたまま彼が呟く。
「昔空手をしていたから指の皮が厚いんだ」
言葉にしなくても、正面に座る俺の視線を敏感に察したようだ。意外だろ、と付け加えられた台詞は、自分の容姿がどう見えるかを的確に理解している証だった。
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