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    MOURNINGディミレト
    ディミトリとの逢瀬が、自分の風邪で破綻になってしまいそれでも無理をして会いに行くお話。昔々に書いたものなので文体が今と全然違います。
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    「そういえば陛下への縁談、大司教猊下も誰か良い方はおりませんかね?」

    数節程前に元王国領のとある貴族が謁見の際にそんな事を言ってきた。俺は出された茶を飲む手を止める。流石に茶器を落とさなかっただけ褒めて欲しい。ゆっくりと茶器をテーブルに置くと我ながら恐ろしい程の演技をした。

    「そうですね…。それは難しい事案ですね」

    それだけ返すのがやっとだった。俺の返事に目の前の貴族の男性は特に変な顔をすることも無く、ひとりで唸っていた。

    フォドラ統一国王となり、終戦後の今も奔走しているかつての教え子の姿が目に浮かぶ。彼は今もきっと王都フェルディアで執務作業にでも追われているのだろう。互いに似た立場になると大変なものだなと何処か他人事のように考える。

    「終戦から時が経ったとはいえ、未だに華やかな話題にかけます。早く陛下が結婚し世継ぎが生まれれば、民もさぞ安心すると思うのです」  

    そう捲し立てる彼に何も言えなくなる。大司教としての立場がなかったら叫んでいたのだろうか?わたしはその国王陛下の恋人で、将来を誓いあった仲なのだと。


    「……はぁ…」

    ぱたんと閉まる私室の扉に漸く張 4685