zügeln 同じところを回り続ける仕掛けなんて子供騙しだと思う。
この馬は疲れない。相性もないし、機嫌の良し悪しだってない。生き物の温かみもない。そのかわり、木彫りの滑らかな感触と機械の駆動音がする。人間の都合で動いて、止められる馬。その代わりどこへもいけない馬。繋がれて回って、同じ高さで、同じ顔をして。
「もうちょっと楽しそうにしろよ」
「楽しいですよ」
「そうは見えないが…」
「新しい技術ですから、きっとあなたの役に立つでしょう。ただの娯楽でも技術には変わりない」
人間の技術はいつも人を殺すところから新たな段へ進む。この絡繰だってそうだ。無害そうな見た目で、この単純な仕掛けが何から成り立っているかわからない私ではない。人の暮らしはどんどん前へ進む。花形だった騎兵、軍人の誉は文字通り形骸化して、感傷に浸る間も無くただ前へと時代が過ぎる。
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