Good night, me that day. じと、と水に濡れる感覚がする。
その感覚は手のひらのような形をしていて、べたべたと足元から這うように上ってくる。頭の先まで這い上がってくれば、もう全身がすっかり水の中に沈んでしまったようだ。それは恐ろしいほど冷たい、暗い海の中を思い出させた。
――いや。自分はこの感覚を知らない。それは今の自分ではない、別の自分の記憶だ。
昼間だと言うのに黒い暗い雲が空を覆い尽くしていたあの日、爆沈する船から海に放り出されて、為す術もなくひとり水底へ沈んでいった一回目の自分。彼のことを、今の自分は知らない。特別に任務記録を見せてもらったから知っているだけで、実際にはシライによって船から助け出された記憶しか自分には残っていない。
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