ピンクッション 3「一生恨むぞ、ジャック」
入隊式の後、充血した目をした真っ赤になった目もとを晒しながらやってきたデュースを前にジャックは大口を開けて笑った。彼はぶすくれた表情で頬を膨らませている。容貌は大人びたのに、少し子どもっぽい仕草は変わっていない。
春のあたたかな風がふたりの頬を撫でる。ホールの外はまだ初々しい魔法執行官たちの姿が疎らに残っていた。音楽隊のミーティングをこなし、メンバーたちに肩を叩かれ頭を撫でられて送り出されたジャックは、ホールの外で待ち伏せをしていた久しぶりのかつての同級生と向かい合っていた。
「新入隊員代表の挨拶なんて一生に一度の晴れ舞台だったってのに、ボロボロになったじゃないか!」
「いや、あれはあれで伝説に残っただろ」
2367