馬鹿じゃない「シノ。満点だ」
ファウストはたっぷりと慈愛のこもったまなざしで微笑んだ。
魔法舎の東の国にあてがわれた一室で、授業の最初に「先日の試験の結果を返す」と、そう厳かに宣言された後の一言だった。
窓から入ってくるあたたかな日差しに負けず劣らず柔らかな物腰で、試験用紙が差し出される。シノは頬を染め、少し誇らしげに、しかし平素の態度を保ってファウストからそれを受け取った。ヒースは口を開け驚きながらも瞳を輝かせ、ネロは気まずげに己の用紙をこそこそと隠しながら、しかしシノを見る目は優しかった。
「すごい、シノ! すごいよ!」
「いつものように満点取ってるヒースもすごいけどな。……参考までに、コツとかあんの? シノくん」
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