⁑type-9⁑
疲れた。
珍しく先輩がぽつりとこぼす。
「大丈夫ですか?」
露天風呂の広い湯船に身を浸し顔の半分まで沈め息なのか返事なのかぶくぶくと水泡を残したあと、たぷんっと頭まで沈まれる。子供のような行動に本当に珍しいなとゆらゆらと水中で揺れる金色の髪を見ること1分。
更にそこから30を数えても揺蕩う金の髪は水中からあがってこず、さすがにおかしいと脇の下から手をいれ身体を引き上げる。
「先輩っ!」
「なんだ、どうした?」
力を込めたら折れてしまいそうな華奢な腕に薄い身体、それを引き寄せると先輩は小首を傾げきょとんとした顔。
「それはこちらの台詞です!」
「?」
本気でわかっていない顔で顔にはりつく髪をかきあげてこちらの言葉を待っている先輩に、もやっともいらっともつかない感情が湧く。だがまずは理由を伺うのが先だ、もしかしたら崇高な理由があるかもしれない。
1996