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    あんり⁂

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    あんり⁂

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    比良/エン(現在軸)

    そそ戦前の架空のインターバル。
    そそvsアキト、先輩ガチ勢の無益な舌戦と、アキト大好きな先輩のコミカルあまいちゃ。

    ⁑type-2⁑

    「己の比良坂を舐めるなよ!!」
     うちの比良坂を舐めるなよ!! と啖呵を切るつもりが、あまりにもしつこいそうそうからのアプローチという名の比良坂下げにキレたエンラはそう啖呵を切っていた。
    「俺のって言った」
    「俺のって言ったな……」
    「言いましたね」
     前線に出てきているヨミ、ヤミ、クロシバ、ミソギがざわつく、とこよがいなかったのは幸いか。しかし彼女は二人の関係を知っているきらいはあるので、いたらいたで張り合っただろうなぁとミソギは胸中で微笑む。
    そんな周囲にわざとらしい咳払いをひとつして、うちの比良坂を舐めるなよ! と言い直すエンラに、今度は言い直した、言い直したとざわつく面々。
    どう取り繕ってもざわつく面々に、邸に戻すかと一瞥をくれたところでヨミがはっと顔をあげ周囲を警戒するように見渡す。何かを感じ取ったのかと注視すれば
    「これ一番聞きたいはずの本人は⁉︎ 比良坂さんはどこ⁉︎」
    と真剣な声で比良坂の名を呼び周りを見渡すヨミ。
    言われてみれば比良坂がいないとヤミをはじめ他の面々も周りを探しだす。
    「あいつには用を頼んだからな」
     なんだそんなことかと告げるエンラに、そんなーと心底残念がるヨミ。
    「兄ちゃん落ち込みすぎだって、どーせあいつらは俺らの知らないとこでいちゃいちゃえろいことしてんだから、あれくらいいくらでも言われてるに決まってるぜ!」
     想像以上に落ち込んだヨミを励まそうと肩をポンポンと叩きながら殊更明るく伝えると、そうかな? とヨミが少し表情を戻す。
    そんな双子に、するか! と反論したく口をひらくがそれは今の話であって、こいつらがくる前まで遡ると否定はできない……と嘘をつけない性分が変なところで作用し、もごもごと口ごもり結局口を閉ざす。それを見たヤミは我が意を得たりとヨミの肩を更に叩く。
    「ほら、エンラの奴も否定しねぇし! いくらでもヤッてるし言ってるって! 昨日だって俺らが風呂入ってる間とかに1年分ヤッ」
    「貴様らが来てからはヤッてない!……あ」
    「あ、ボクたちもっと気をつかった方がよかったですよね。すみませんっ」
    「あー、人目って気になるよねェ」
     あまりに捲し立てるのを聞き逃せず反射的に、そして馬鹿正直に反論してしまうが一斉に向けられた視線に失言を自覚する。そしてまたもや好き勝手言い出す面々にメンタルが羞恥心からくず折れそうになったところで、ガチャガチャと金属音と共に比良坂が戻ってくる。
    「武器の補充や交換おわりました、先輩」
     個々人へと配布していた武器で損傷があるものは交換、そして予備などが必要そうな者への追加武器の調達を頼まれていた比良坂。大ぶりなボストンバッグに武器をーーそのバッグの影にベルトが見えるがそれが何かまではよく見えないーー、その他のちょっとした物を詰めたワンショルダーバッグとを左肩にかけているが重そうな様子もなく、冷静な口調で告げる。
    「比良坂さん、遅いですよ! エンラくんがそうそうに比良坂さんのことをっ」
    「神田ヨミ!! それ以上言うな」
     ギンッと一閃された刃のように鋭い視線と声に圧されヨミは咄嗟に口を噤む、だがそこまで聞いた比良坂はヨミに向けていた視線をエンラへと向け、ショルダーバッグをヤミに預けてからエンラまでの5mほどの距離を一気に詰め
    「私がどうかしましたか? 何か粗相を?」
    エンラとそうそうを見比べる、エンラへ向ける視線とは異なりそうそうへ向けるのは怨嗟の眼差しだが。
    ″己の比良坂″発言に茫然自失だったそうそうは比良坂の睨みで我に返り、こちらも同じく怨嗟の眼差しで睨み返す。
    「存在が粗相そのものな罪人風情が、のぶながに気安いぞ」
    「先輩、なぜ視線を逸らされるのですか? 私が何かやらかしたのなら、もちろんお叱りも罰も受けます」
    「叱りも罰も、のぶなががくだすまでもない。俺が貴様を処け」
    「黙れ、メンヘラストーカーロン毛」
     エンラの返事が聞きたいというのに、間にはいってくるのは偉そうになんとかの椅子に踏ん反り返って座り傲慢無礼に捲し立ててくるそうそう。口を開きかけたエンラを閉口させる勢いにブチっと音を立てて堪忍袋の尾が切れる、元々そうそう相手にそんなものはありはしないが。
    「貴様にロン毛と言われる筋合いは無い、信者ロン毛!!」
    「そこかよ!」
     ぎゃんっと叫んだそうそうに、間髪入れず叫び返すヤミ。
    「今、先輩と大事な話をしているところだ黙っていろ。それと私のこの髪型は、今のお姿のように学生の頃の先輩とはじめてお会いした時のものだ。ああ、お前は現実の先輩とは面識も接点も無かったな」
     はんっと鼻で笑い、口調は挑発的に嘲りを混ぜる。それにそうそうが黙っているはずもなく、面の下で怒りから顔を真っ赤にしてしばらく繰り広げられる不毛なマウント合戦。

     学生たちは門扉に背を預けて座り比良坂から渡されたショルダーバッグに入っている飲み物や食べ物片手に見物、先ほどまでのれおにだす戦から一転やすい茶番を。
    「お付き合いしているのを知ってるのに、叶わない横恋慕は辛くないんでしょうか……」
     ペットボトルの水を両の手のひらで包み込みぽつりと呟くミソギに、ヨミは少し考えて言葉を選ぶ。
    「人それぞれだと思うけど、それを辛いと思えるミソギくんは優しい恋をするんだろうね」
    「そっ、そんなっ」
    「はっ⁉︎ ミソギ、兄ちゃんに色目つかうなよ⁉︎」
    「この平和な感じ、久しぶりだァ」
     ほのぼのとした空気が流れる学生達とは裏腹に、随分と大人気なくそして随分と野暮なことまで張り合っている比良坂とそうそうにエンラは深く溜息を吐き出す。しかし当の二人はエンラの呆れに気付かない。
    「いつも一緒だなどと言うが、のぶなががあんとわねっとの元に監禁されていた間は会っていないだろう!」
    「その間は、先輩のホトトギスでラブレターのやり取りをしていた! 会えなくとも私たちの想いは繋がっている!」
     語気こそ強いものの徐にスーツの内ポケットへ手を入れ優しく取り出したのは、ゴムで束にまとめられた片手には余るほどのホトトギス。それが今の発言にあったラブレターだというのは、流れ的にもそして比良坂が宝物のように扱う姿勢からも分かりそうそうはぐっと言葉に詰まる。言うだけならいくらでも言えるが現物がありそれを突きつけられると論破が難しい。
    誇らしげな顔の比良坂と悔しそうなそうそう、にやにやと笑う学生達。
    (比良坂、何故そんな物を持ち歩いている⁉︎)
    思いもかけないものを証拠として取り出した比良坂にさすがに居た堪れなくなり口を開く。
    「比良坂、もう黙れ。あんな奴の相手をする必要は無い」
    「しかし先輩! あんな奴に好き勝手言われたくはありません、先輩が汚されます」
     ああだこうだとマウントにもならないような事や、自分上げ比良坂下げを繰り返してくるそうそうにエンラ自身も思うところはかなりあるーーそれが故の先ほどの失言なわけだがーー、それでも比良坂が言い返す内容が事実に基づいているのでさすがに恥ずかしい気持ちや居た堪れなさもあるわけで。しかし比良坂もエンラのことを言われて怒りと怨嗟がヒートアップしているようで、普段なら聞き入れる命令を聞き入れずそうそうとの舌戦を継続。
    「……比良坂、ハウス」
     溜息をつくのも疲れ、ただ淡々と単語の音として吐き出す。
    「ハウスって犬かよ」
    「比良坂さんが前線から離れるのは戦力的に痛いよ」
    「大型犬っぽい感じはするかも」
     もれなく聞いていたヨミとヤミ、そしてクロシバがぽそぽそと言い合うのは無視して、ピタリと動きと舌戦を止めた比良坂が勢いよく振り返りじっと見てきたところに再び言葉を重ねる。
    「比良坂、ハウスだぞ」
     そうそうは、エンラが言うハウスの意味、そしてそれを聞くなりこちらへむけていた怨嗟の一切が途切れた比良坂ふたりの行動の意味がわからずひとまず口を閉ざし様子をうかがう。罪人達が言うようにもし比良坂が前線から退くならそれは願ってもいないことだ。
    「……霙木先輩、申し訳ありませんでした」
     そうそう達刑吏と学生達が見守るなか比良坂はエンラへ向き直り深々と頭をさげる、その真摯な態度は本心からの謝罪に他ならずエンラは満足そうに頷くとすっと両手を広げる。その気配に比良坂は顔を上げエンラの前に歩み寄る、そうすればひろげられていた腕がするりと背中へ回され優しく背を撫でてくる感触に自然と頬が綻ぶ。
    二度、三度とあやすように撫でられそうそうとの舌戦でざわついていた心が凪いでいくのを感じていると控えめに紫の瞳が見上げてくる、目は口ほどに物を言うとはいうが伊達に18年もの付き合いでは無い、その瞳が告げる想いを汲み取りエンラの背中に腕を回し抱きしめる。それにエンラは満足げに微笑むので、本能寺の塀の炎をうけてきらきらと輝く金糸のような髪にそっと口付けを落とす。
    学生達にはエンラが比良坂を抱きしめていることはわかるが、比良坂の背中でエンラの視線や何をしているのかなどは見えない。しかしそうそうはその両方が丸見えな位置に陣取っている。
    「……貴様らっっ! リア充は爆発しろ! 比良坂だけ爆発しろ! そしてのぶながは俺のものになれ!」
     ハウスの意味が分かるかと静観していたそうそうだったがただただ眼前でいちゃつく様を見せつけられ限界に達し、椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がると有無を言わせぬ勢いで唾を飛ばしながら捲し立てる。
    それを煩いなと思いながらもエンラの腕を感じていたがぽんぽんと背中をやんわり叩き離すように伝えられ、名残惜しさを感じながらも腕をほどく。
    「貴様が爆発しろ」
     比良坂の腕から離れ不機嫌を隠そうともしない険しい表情と、静かな怒りで低くなった声に威圧感をはらんだ語気で吐き捨てるエンラ。普段は無視されることばかりで明確な突き刺すような怒りを向けられることはほとんど無かったそうそうはらしくもなくたじろぐ、ご機嫌取りな何かをと口を開くが声にだすより先に
    「己の比良坂を侮辱するな」
    畳み掛けられぐっと呻めき、力なく椅子へと倒れ込むように腰をおろす。覇気もなく俯いたそうそうを心配した13人の花嫁たちがすすすっと寄ってくるのをそうそうは片手で制し、その腕を肘置きにおいて頬杖をつく。
    「3連戦ではのぶながも分が悪かろうと最後の情けで俺に従属するならばお前の無事だけは保証しようと設けた交渉の場ではあったが、完全に決裂した」
    「そんな流れだったのかよ、これ」
    「たしかに、最初そんなようなことを言ってました……」
    「イケメンバカップルと間男の修羅場って再生回数とれるから撮りたかったなァ、7桁バズはいけてたはず!」
    「あ、そうそうが睨んでるからみんな黙って!」
     先ほどまで取り乱していたのが嘘のような優雅さと高貴さで悠然と構えよく通り心に響く声で宣言したそうそうの言葉に、それまで黙っていた学生達が一斉に口を開きぼそぼそと喋りだす。それを睨め付けてやれば唯一気付いたヨミが慌てた様子で3人を制しぺこりと控えめな会釈を寄越す。
    (そんな流れだったのか……)
    (そういえば、そんな話だったな)
     遅れてきたので事情をしらぬまま舌戦を繰り広げた比良坂と、学生達のように声にこそ出さなかったが気持ちは同じなエンラは揃って似たようなことを胸中でつぶやく。それが滲みでたのかそうそうは器用に舌打ちからの溜息をほぼ同時に吐き出し
    「これより戦いを再開する! 神田ヨミの首は椅子の材料にする、首以外はどうなろうが構わん! 首を献上しろ!」
    高らかに宣言するそうそうに13人の花嫁達と兵達からわーっ! と歓声があがり、これまで映画鑑賞くらいの気軽さで眺めていた学生達の間に一気に緊張が戻る。
    「のぶながの亡骸はエンバーミングを施し俺の部屋に飾るため無闇矢鱈な傷を付けることは許さぬ! 特に顔は傷付けず献上しろ!」
     戻ったはずの緊張が刹那で霧散しエンラは嫌悪感も顕に刀に手をかけるが、横で同じく動いた比良坂に視線をくれて目を瞠る。
    肩からさげたボストンバックを地面へおろしその影に肩からさげていたRPG-7を構えていた、使える罪人がいなかったことと弾速が遅くアジリティにも特化したエンラには意味がないので忘れていたがそういえばそんな武器もあったなと思いながらするりと砲身を撫でて比良坂から距離をおく。
    「開戦の狼煙のつもりか! そんな遅い弾速いくらでも避けられる!」
    「ホトトギスによるバフがかかっているに決まっているだろう」
     嘲るように吐き捨てたそうそうの言葉が終わるより早くに発射された弾丸は、すぐさま続けられたエンラの言葉より速く着弾し周囲一体を熱波が包む。
    離れた場所にいた学生達が無事かを視線の端で確認、呆気にとられた顔をしているが無事であるようでつづいて比良坂へ視線を移せばこちらはそうそうがいた場所から目を逸らすことなく次弾を発射。
    対中級刑吏用武器の銃器は残弾数の縛りがなくリロードすることなく連射が可能、それをホトトギスによる弾速加速と追尾機能のバフでたたみかけていく。
    (戦いの場でこいつが横にいると安心するな、黄金の右腕とはよく言ったものだ)
     そうせずして熱波と爆煙のなかから飛び出してくるであろうそうそうを迎撃すべく、鯉口を切き体勢を落とす。
    「交渉など小賢しい、己を討ちたいのなら自ら来い!」
     そんなエンラの一喝と同時に飛び出してきたそうそう、不毛で不純な交渉とは名ばかりのインターバルから決して負けるわけにはいかない激戦が再開された。

    蛇足:

    (ハウストレーニング→ハウスは居心地がよく安心できる場所と認識させる=比良坂さんを安心させて冷静にさせるのが目的)
    ハウス発言は犬扱いではなく、(自分に関する事で対外の者へ)逆上し言葉に耳を貸さない比良坂さんに、自分を見るよう命じるコマンド。己を見ろって言うのはあれだからコマンドつくった、単語はハウスじゃなくてもよかったけど、はいねちゃんと一緒に動物番組を観ていて思いついた先輩。
    ーーみたいな感じです。
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