「良かった……皆が無事で」
皆ボロボロではあるが、死者も出ずに脱出できた事にフローラは胸をほっと撫で下ろす。
「ホント、良く脱出できましたよねぇ……」
「ああ……」
背中から聞こえてきた少しだけ低めの中性的な声に、反射的な返事をする。だが、その声の主が絶対に間違うはずのない人だった事に気付きフローラは目を見開いた。
嘘だ。そんなはずがない。彼女はもう……
フローラがゆっくりと声がした方に視線を向けると、そこにはずっと会いたいと思っていた蒼い髪の想い人が立っていた。思わず、失礼ながらも指をさしてしまう。
「……ア、バン……?」
「お久しぶりです。フローラ様」
彼女はまるで何事もなかったかのように微笑みそう言って会釈をする。
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